リスニングは英語力の根幹ですが、苦手な学習者も多いです。
かくいう私もかなりリスニングには苦労してきました。
しかし今では資格試験で満点は余裕でとれますし、英語ニュースは100%理解出来ます。
映画や海外ドラマもほぼ100%聞き取れます。
今回は経験とリスニング力そのものの分析を通じて、効果的な学習をお伝えしていきます。
そもそもリスニング理解とは?
「リスニングが聞き取れない」の理由について考えたことはありますか?
こう聞くとほとんどの方が「速すぎて音が聞こえない」と答えますが、実はあまり的確ではありません。
実は多くの人は音は聞き取れているし、スピードにもついていけることが多いです。
詳しく見ていきましょう。
リスニング力には大きく分けて2つの側面があります。
「意味の理解」と「音の理解」です。
つまり、まずは「単語や文法構成」が理解できるかがリスニング力の大きな部分を占めます。
知らない単語ばかりだと当然音声で理解できるわけありません。
読んでもわからないものを聞いてわかるはずがないからです。
私は英語はほぼ音声で理解できますが、スペイン語はまったくわかりません。
語彙や文法の知識がないからです。
イglゥゥ(イグルーに近い)と聞いたときに理解できる方はほとんどいないはずです。
なぜならその語の意味を知らない方がほとんどだからです。
(ちなみにイヌイットの住む、かまくらのような家のことです)
また文法についても理解がないと意味を理解できません。
USJ is as popular as TDL.
(内容の真偽は別にして笑)
as ~as は=の意味と知らないとこの文は理解できませんし、音声ならなおさらです。
やはり語彙力・文法力はリスニングに大きな役割をもってるのです。
2つ目の「音の理解」です。
面白いことに「音の違いに気づくこと」と「音の理解」は別なんです。
ほとんどの学習者は基本的に音の違いは気づくことが出来ます。
例えば日本語に存在しない/v/ /l/ /r/は違いが聞き取れないと考える方が多いですが、
じっくり聞き比べると明らかに音の質の違いを感じることが出来ます。
では「音の理解」とは何でしょうか。
それは「音声が意味とつながる」ことです。
つまり単語や文を読んだときに文字を意味として理解するように、
その音声を意味として理解できるかがポイントとなります。
patientという語をパティエンtと認識していては読んで理解できても音声では全く理解できません。
そんな発音ではないからです。
厄介なことにフレーズや文になると英語の音は大きく変化します。
これを音声面の文法、「音法」といいます。
つまり1語レベルで正しく認識していても、文章になると音声変化が起こるため、
変化後も同じ意味として理解する必要があるんです。
デイズニー映画の主題歌がレリゴーに聞こえることは有名ですが、
実際にレリゴーに近く発音されているからです。
Let it go.
tが母音(eとi)に挟まれると影響を受けて弱いdのようになり、
速く発話すると舌先が触れる時間が短くなり、
日本語のラ行に酷似します。
この文をレットイットゴーとしか覚えてなかったら絶対に音声理解をできません。
どうすればリスニングが上達するのか?
つまり単語の発音や、文になった際の音声変化を理解できないからリスニングができないんですね。
いかに文法や、単語の文字と意味がわかっていても、その発音がわからないと
聞いたときの理解には至りません。
その意味では単語・文法の知識とは意味、音、使い方の総合力と言えます。
聞き取れなくて聞き取れなくてスクリプトを見たら「こんな簡単な英語だったのか」と思うことはありませんか。
これは語彙や文法が音声で頭に登録がされていないことが原因です。
うじゅいー?
と聞いて
What did you eat?
と理解できるかどうかが、この音声の脳内での登録のされ方で決まります。
音声変化について難しく考える方が多いですが、基本的に聞こえた通りの真似をしながら練習すれば
多くの場合は事足ります。
我々の耳は思いのほか正確に違いを聞き取っているからです。
(レリゴーの例のように)
それに加えていくつかの基本の音声変化ルールを学ぶとより学習が進みます。
Good morning.
をグッドモーニングと読む人はあまりいませんよね。
ほとんどの方が自然にgモーニンと発音できるし、聞き取れます。
もちろん、単語や文法の知識がないと音が聞き取れても内容が理解できません。
「音」と「意味」という2つの理解が出来ればほとんどの英語音声で「速い」と感じることはなくなります。
我々が日本語を話すときと同様、ほとんどの英語は別に早口で話されているわけではないからです。
ここに「スタミナ」がつくことがリスニング力が上達することにほかなりません。
このためには流れてくる英語音声の情報をかたまりごとに理解する力が必要です。
まるで11桁の電話番号を3つの塊にまとめると覚えやすくなるように、
リスニング力がついてくると瞬間で意味処理をできる塊が大きくなります。
リスニング力は「音理解」「意味理解」「スタミナ」の3つの観点を伸ばすことで効率的に上達させることができます。
リスニングの弱点を見つける方法
①リスニングで理解できない音源を用意する。
②スクリプト(文字)を確認して、知らない単語はない。
はい→③
いいえ→単語の理解が原因
③読んだら100%わかる
はい→④へ
いいえ→文法理解が原因
④英文をみながらリスニングをしたら音源と同じスピードで読める
はい→音の理解の問題
いいえ→スタミナと処理速度が原因
このようにリスニングが出来ない原因は多様で、特定することで対策が可能になります。
実際のリスニングトレーニング方法
以下はリスニングに必要な3つの観点をすべて含んだ総合的なトレーニングです。
準備する英文
・まとまった長さのスクリプト付き音源(20~60秒)
・5回聞いたら7割くらいはわかるレベル
・単語、文法が自分のレベルにあっている(知らない単語が多すぎない/少なくとも解説を読んだら文法はわかる)
・日本語訳や単語の説明などが載っている(誤解を避けることができる)
・はっきりと発音されている音源(ネイティブスピーカーの生の音源でない)
いわゆる市販の英語教材ならレベルが合えばどれでもOKです。
いずれレベルが上がればニュースや、海外ドラマにもトライしてもいいですが、
上級者(TOEIC900点以上)までは市販教材で十分でしょう。
ニュースやドラマは中級(TOEIC750以上)から多聴に使いましょう。
では実際のステップです。
1.スクリプトを見ないで聞く(2~5回)。 まずは音のみで理解度チェック。
2.スクリプトを確認。単語・表現で意味または発音のわからないものにマーカー。
→「意味理解」と「音の理解」のどちらが課題かチェック。
3.じっくりリーディング。ゆっくり読めばわかるのか。
わからない場合は文法学習も行う。ここで日本語もチェック。
→読めば理解100%になる。
4.音源を流しながらリーディングをする。リーディングスピード/スタミナを鍛える(2~5回)。
→音源の速度で読んでも理解100%になる。
5.スクリプトを見ないでリスニング。理解が低いところはスクリプトチェック。
音源のみで理解できるまで繰り返す。
→音声を「スピード/スタミナをもって、意味、音の両面から」理解100%。
ここまですることがリスニング上達に最低限必要なステップです。
注意点は聞きながら必ず内容を理解することを意識する点です。
あとはステップ5のみ、週に3回ほど復習すると定着します。
以下は+αでリスニング力を大きく伸ばすトレーニングです。
6.音読をする(1回)
→言いにくい箇所の確認し音声理解のひっかかりポイントをチェック。
7.オーバーラッピング(聞きながら同時にスクリプトを見て音読)(3~5回)。
イントネーション、リズムを真似る気持ちで行う。
→音声変化の練習。
8.言いにくい箇所を聞いてどう発音されているか確認(3~5回)
→音声変化ルールへの気づき。
9.言いにくい箇所のみ、音読練習する(3~5回)。
音声に忠実かつスムーズに言えることがゴール。
10.オーバーラッピングがスムーズに出来たら完成。
11.再度リスニングしてみる。
ここまですると音がかなりクリアに、そしてゆっくり聞こえるようになってきます。
ここでのポイントは音声変化を声に出して練習することです。
この過程で脳内の単語/文法/発音の知識が上書きされ、今後同様の音声を聞いたときに
正しい理解できるようになります。
正しい音声変化を発音できないとスムーズにオーバーラッピングできないので、
自分の音声理解の弱点を知るために大変有効な方法です。
ステップ1~6と同じく意味理解を忘れないようにしましょう。
意味理解を並行すると単語/文法も定着するとされています。
さらに一歩上のリスニングのためにいくつかの学習法をご紹介します。
12.シャドーイングをする(3~5回)。
スクリプトを見ずに、音声を聞いて1秒遅れてコピーしていきます。
→音声理解の力が最も伸びる方法とされています。音の聞き分けに有効です。
13.リピーティング(3~5回)
1文ずつ再生をとめて、そのまま真似して発話します。
はじめは英文を見ながら、ゴールは英文を見ずにスムーズに行います。
→聞くだけに集中する時間で音声変化を分析できるので、
シャドーイングより細かく音声変化を意識できます。
→見ないで行うことで音声情報の記憶保持が必要になるので、
リスニングスタミナがつきます。
苦手な文だけ取り組むことも可。
14.Read&Look Up(3~5回)
目視する→顔を上げる→声に出す。つまらずにスムーズに言えることがゴール。
→短期記憶、音声スピード、音声変化に効果あり。とくに塊で意味をとらえる力が大きく向上します。
内容が長期記憶に移行しやすくなり、スピーキングの土台にもつながります。
完成後はトレーニングした英文がスローかつはっきりと聞こえるようになる。
ここまですると自分でも信じられないくらいに英文が聞き取れるようになれます。
いままで数十人以上もこの方法で学習を体験してもらい、
リスニングが伸びなかった人はいませんでした。
12.13.14のトレーニングは負荷がある程度高いので、オーバーラッピングで
十分に練習をした後で行うとスムーズに進むことができます。
リスニング学習は、耳だけの理解まで進んだ後(ステップ1~5)はオーバーラッピングが
学習の基本となると考えていただくと間違いありません。
番外編
その他のリスニングトレーニングで有効なものをご紹介だけします。
15.ディクテーション
いわゆる音源書き取り。細かなリスニングの聞き取り、音声変化への気づき、
文法知識による聞き取りなど、リスニングに必要なスキルを高めます。
リピート再生でひたすら繰り返しすることが必要。非常に時間がかかる。
16.高速音読
とにかく最高速度で音読する。タイマーで測って音源と比べるといい。
→口慣らしやスピードになれる。
17.スロー音声変化音読
音声変化に忠実かつゆっくり着実に練習する。
→脳内辞書の書き換えに有効。
また音声変化するからといって急いで発話しなくてもよいことに気づく。
リスニングトレーニング教材の選び方
実際にリスニングトレーニングをする際は教材選択が最も重要です。
語彙・文法 易→難
長さ 短→長
速さ 遅→速
以上の要素が難易度に影響しますが、
特に文章の長さがトレーニングをする際に一番影響します。
まずは短いものから初めて徐々に難易度を上げていきましょう。