皆さんが英語(や他の外国語)が出来るようになりたいですか?

「できるならできるほうがいいわい!」

と思う人がほとんどではないですかね?

私もそう思います。

実は中国語やスペイン語も勉強したいんです。

(今は英語に集中してますが)

じゃあ英語(外国語)ができるってどういうことでしょう?

「ネイティブスピーカーのように話せる」

「英語を字幕なしで楽しめる」

「旅行で困らない」

「仕事で不自由なく英語を使える」

「ニュースや新聞を理解できる」

などなど、人によって千差万別ですね。

もう少し詳しくみていきましょう。

日本語ネイティブである自分たちを例にします。

小学生高学年にもなれば「話す力」は大人とそん色ありません。

おそらく日本の大学に来ている留学生より、

発音や文法の自然さ、漢字の読み書きは高い場合が多いでしょう。

でも例えば専攻の論文を理解したり、

レポートを書く力はどうでしょう。

おそらく大学にいる留学生のほうが高いと思われます。

総合的な日本語力は?

日本人の高学年かもしれませんね。

では小学校中学年なら?

ひょっとすると大学の留学生のほうが

日本語力が高いのではないでしょうか。

でもおそらく文法の自然さは日本人の10歳でしょうね。

ほかにもこんな例があります。

青色LEDでノーベル賞を獲得した中村教授の英語は

明らかに外国語と分かります。

さて、第一人者である中村教授とアメリカの大学生が

LEDについて英語で議論をしたとしましょう。

どちらのほうがより中身のある内容を話すことができるでしょうか。

間違いなく中村教授でしょうね。

でもおそらく総合的な英語力はアメリカの大学生のほうが高いでしょう。

同じことは仕事で英語を使う場合にもあてはまります。

海外に出張する方からよく聞くことに、

「プレゼンや交渉はなんとかなるが、食事会で何も話せなくなる」

という悩みがあります。

自分の知っていることは話しやすいわけです。

さて、どうやら英語(外国語)ができるとは、

かなり多くの要素が影響していることが想像できます。

そう考えると自分の伸ばしたい要素に効果的な学習をしないと、

目的に応じた英語力が身に付けることは難しいことになります。

次の項目では外国語能力の構成要素を詳しくみていきましょう。

外国語能力の構成要素:スキル編

外国語の能力は様々な側面から8つのスキルで構成されています。

まずは下のモデルをご覧ください。

これは私が言語学、外国語習得理論、多くの教育研究や実践、

そして自分自身の学習経験と指導経験からまとめた、

外国語能力の見取り図です。

一般的な言語学の分類に母国語の要素と詳細を加えました。

言語力、は外国語に対する基本的な能力です。

発音、語彙、文法の3つの能力があると、

誤解なく相手に内容が伝わります。

一般的に外国語能力といえば

言語力を思い浮かべる人が多いと思いますが、

実際にはその一部なんです。

やりとり能力、とは言いたいことを理解し、

相手にも伝える能力です。

ここは細かくみていきましょう。

まず意図・文脈、は言葉以上の内容

理解し伝えるときに必要になります。

日本語で考えましょう。

真夏日に外出先から帰った2人の友人ABがいます。

部屋に戻ってAの一言目が、

「うっわ、この部屋サウナみたいやな!」

さてBはどう反応するのが普通でしょう?

「サウナは90℃あるからもっと暑いよ。」とか

「たしかに。ここにいると健康的だね。」なんて

いったりしますか。

普通は「すぐエアコンつけよ!」とかになりますよね?

Aは別にサウナについて言っているのではなく、

部屋の暑さが我慢できないことを言いたいんですから。

ちなみにTOEICでこれ系の問題が

リスニングでよく出てきます。

A「今日の仕事終わりに映画みない?」

B「明日のプロジェクトの準備がまだなんだ。」

のような問題ですね。

Bは誘いに明確に答えてませんが、断っているんですね。

そしてこの文脈・意図理解の最難関が、

ジョークと皮肉です。

さらにジョークは後で話す背景知識も要求するので、

ノンネイティブの鬼門です(笑)

皮肉に関してはこんな表現もあります。

GoogleMapを見ながら30分かけて到着したレストラン。

やっと到着してみると満席で1時間待ちの状況。

「This is great.」

真逆の、最低という意味で使われていますね。

言語の理解には言葉以上のものがあるんですね。

次のやりとり能力である論理、

複数の文をまとめる力です。

「外が寒いので、薄着で出かけた」

はあきらかにおかしいですね(笑)

ライティングやスピーチで重要なのはもちろん、

相手の話の流れを把握するときにも大切な力です。

Even though—-ときたら、

大事なことが後にくる、とわかります。

この力が高いと相手にわかりやすく伝えることができ、

また相手の話を予測をたてて聞くことが出来るようになります。

次の切り抜け力、は言いたいことを言えないときに、

会話を成立させる能力です。

言い換えや例を挙げることもあれば、

身振りや表情、聞き返すなどの行為も含まれます。

見落とされがちですが、すごく重要で、

出川哲朗さんのコミュニケーション能力の高さは

だれもが知るところですね(笑)

ちなみに日本人は会話で困ると、

表情で訴えることをかなり有効に使います。

一方で笑ってごまかすことも多いですが

これは切り抜けというよりやり過ごしに近く、

問題解決していない点で異なります。

我々ノンネイティブにとって、

切り抜け力はコミュニケーション能力の大きな力になるので、

積極的に身に付けたいスキルです。

外国語能力の最後の項目は、母国語力です。

え、と思う方も多いかもしれませんが、

母国語は外国語能力の大きな割合を占めています。

難しい言葉で概念化とも呼ばれますが、

簡単にいうといいたい内容を思いつくという意味です。

また聞くときには言われた内容を理解できることです。

日本語で考えましょう。

先日の2023年6月の英検1級の

ライティングトピックを紹介します。

「外資企業の投資は日本経済に必要か」

「外資企業とは」「投資とは」「日本経済の現状」

を知らないと、意味のある内容を書くことは不可能ですね。

(幸い英検は内容までチェックされませんが)

また予備知識のない状態で

このテーマの講演を聞くとするとどうでしょう。

おそらく理解度はかなり低いでしょう。

同じことは経験についても言えます。

もしあなたが実際に外資系ファンドに務めていたら、

知識だけでなく、経験に基づいてさらに内容を深めることが可能です。

冒頭でお伝えした、中村教授や海外出張の英語の話が、

この背景知識と経験のなせる業なんですね。

なので人生経験の豊富な方は外国語学習に向いているといえます。

言いたいことがたくさんあって、言語力に集中できますから。

外国語能力の構成要素:習熟度編

前の項目で外国語能力には8つのスキルが

影響することをご紹介しました。

次はこの8つのスキルが高いか低いか、

つまり習熟度についてお話します。

また下の図をご参照ください。

「わかる」は理解度で、

「使える」は発信力です。

基本的に「わかる」ことの一部が「使える」ので、

「わかる」のほうが大きくなります。

このギャップが少ないと英語運用力が効率的といえます。

ちなみに音で「わかる」がリスニング、

文字で「わかる」がリーディング、

音で「使える」がスピーキング、

文字で「使える」がライティングです。

次に個別のスキルについては、

「正確性」「スピード(流暢性)」「複雑性」

がお互いに関連しあって影響します。

つまり正確性を上げると、スピードが下がる、など

トレードオフの関係(3つの合計は同じ)になります。

3つの総合力が各スキルの熟達度です。

そしてこの3つの力が「無意識レベルに定着」したのが、

自動化した状態です。

リスニングで考えましょう。

簡単な語彙と文法で馴染みのある話題(複雑性)なら、

かなりの速さ(スピード)でもしっかり理解(正確性)できます。

逆に慣れていない文法(複雑性)だと見直さないと(スピード)、

理解が落ちます(正確性)。

実際には8つのスキル×3つの能力が複雑にからんで、

言語理解と使用に影響をします。

冒頭の例でいうと、映画の英語の場合、

スクリプトを読んだらすごく簡単なことが多いです。

でも字幕なしだと理解に困る方がほとんどですね。

原因は例えば「発音の正確性」「話すスピード」

が考えられます。

カジュアルな発音を学ぶと驚くほど映画の英語は理解しやすくなります。

最後に自動化の例を1つ挙げましょう。

Good morning.

とネイティブスピーカーに言われて、

反応できない人はほとんどいません。

発音はgモーネンのようになりますが、

気にしないで瞬時に理解されますね。

これ、語彙と発音の「わかる」が自動化された状態です。

返答でグッドモーニングと

カタカナになる人もいると思います。

これは発音の「使える」の正確性が低くて、

自動化されていないんですね。

わかると使えるにはギャップがあるんです。

このように8つのスキルと3つの能力は関連していますが、

その習熟度はけっこう異なるのが普通です。

最後に大事なこと!

話す聞くは音ベースのスキルと言いました。

音は消えるので、スピードが重要です。

スピードが優先されると、トレードオフの関係にある、

「複雑性」と「正確性」は下がります。

実際書き言葉はかなり複雑な文章が使われます。

理解に必要な時間を読み手が調整できるからです。

一方で会話ではかなりシンプルな表現が使われて、

言い直しもしょっちゅうあります。

日本人はよく正確性の呪縛にかかっているといわれますが、

正しく言おうとして極端に少ない量しか

口に出ないような状態です。

そしてそれはスピードを求められる会話において、

大きなデメリットなんです。

正確であろうとする意識は大事ですが、

会話ではとにかく話す、伝えると優先することが必要です。

正確な文を30秒かけてひねり出した人よりも、

不正確ながら30秒話し続けた人のほうが、

与えた情報量も理解された情報量も多いのですから。

ましてや文法的正確さは8つのスキル×3つの側面の

わずか1つにすぎないと考えると、

相対的に優先度は下がりますね。

(読み書きでは正確性すごく大事ですよ!)

理論を学習に反映させる

ここまで外国語能力の理論について紹介しました。

「そんなことよりどうやって英語うまくなるねん!」

はい、もっともですね(笑)

ここからは理論を実際の学習に反映させましょう。

結論からいうと、海外ドラマが最強です(唯一ではない)。

文脈があり、発音が自然で、話者の意図も明確で、

皮肉やジョークが出たり、文化も触れることができ、

表情やジェスチャーも学べ、語彙と表現は実践的です。

ありきたりですが、考えれば考えるほど

海外ドラマでの英語学習は理にかなっています。

楽しく多くのインプットができる点も

科学的に有効性が裏付けられています。

ただしあくまで「わかる」スキルのみなので、

学んだ表現や内容を積極的に自分で使わないと、

「使う」ことにはなかなかつながりません。

また発音を真似したり、

知らない表現を調べたりすることが

上達には効果的です。

繰り返し出る、わからない文法項目を確認することも

必要になるでしょう。

実際にいきなり海外ドラマを見ようとすると、

まったくついていけないこともあるかと思います。

その場合、焦らずに基本語彙や中学レベルの文法

学んでからでも全然遅くはありません。

より効果的なトレーニングは

より高度な英語であることが多いです。

前段階として基礎を固めることにじっくり取り組みましょう。

そのことが今後の上達を加速してくれます。

その上でなるべく↑の多くのスキルに重なる

教材や学習を心掛けましょう。

また普段から日本語でいいので、

読書をすることも大切ですね。

英語はあくまであなたの考えることを、

より多くの人に知ってもらうためのツールでしかありませんから。

まとめ

外国語能力には多くの側面があります。

英語力とはあくまでこれら多くの側面の総合力です。

自分にとって必要なことを見極めて、

効果的に英語力を上達させましょう。