公教育と生徒/英語教師の英語力と英検レベル

今日は少し堅めのトピックです。

先月、文部科学省が「英語教育実施状況調査」を公表しました。

(文科省の該当ページ)

今回はこの調査結果についてお話します。

英語教育実施状況調査とは

これは全国の公立小中高での英語教育の状況をまとめたもので、

教員の英語使用率や、生徒の会話割合、ICTの利用状況、

といった多くのデータを都道府県+政令指定都市で

まとめたものになっています。

また目標値も設定されていて、

その到達度を測るためにも使われています。

簡単にいうと、

日本の公教育における英語教育の目標と達成度の調査

ということができます。

生徒と教員の英語力の目標と現状

今回は数ある調査結果のなかから、

生徒の英語力」「教師の英語力」の

目標」「達成度」についてご紹介します。

英語力について、調査ではCEFR表記ですが、

ここでは対応する英検レベルに直して表記します。

また数字は「その地域内で卒業段階で」、

その英語力を持つ人の割合となっています。

以下2023年卒業段階の全国の結果です。

校種生徒の目標生徒の結果教員の目標教員の結果
中学英検3級以上50%以上49.2%英検準1級以上50%以上41.6%
高校英検準2級以上50%以上48.7%英検準1級以上75%以上72.3%

ちなみに今年から始めて公表された資料があり、

高校生の英検2級以上の割合:21.2%、

高校教師の英検1級レベルの割合:22.5%

が報告されました。

また高校に関しては学科別の状況も公表されており、

下記の通りです。

学科英検準2級レベル英検2級レベル以上
普通62.2%27.6%
国際93.1%57.1%
その他19.6%6.7%

いかがでしょう?

生徒に関しては、ほとんど目標達成している状況ですね。

教員も高校では達成間近です。

(ちなみに高校教員目標は前年は74.9%、退職者かな)

高校については普通科で62%を達成は目標に対して、

かなりの健闘と思います。

という高校は普通科の目標を設定するほうが

実態がわかるのでは、と考えます。

圧倒的大多数が普通科に通うので。

全ての数字で過去10年継続して改善傾向で、

確実に生徒と教員の英語力は伸びていることがわかります。

10年前の実績

中学生高校生中学教員高校教員
25.5%30.4%27.9%52.7%

調査からわかる課題点

文科省の調査は以下の3点で改善点があると考えます。

客観性」「目標の妥当性」「中学教員の英語力

まず客観性ですが、実は調査では資格試験の合格者だけでなく、

4技能未満のスコアを持つ生徒のうち、

英検合格レベルの力をもつと教師が決めた生徒も含まれます。

さらに学校で実施される4技能テストで同等の力があると

教師が判断した生徒も含まれます。

このCEFRレベル(英検)を持つと「思われる」生徒が、

目標達成生徒の4割程度を含めます。

判断の基準があるのかもしれませんが、

公表されていないので、この数字は控えめに見る必要があるでしょう。

純粋に資格試験のみの数字にすると、

中学で目標達成27.3%、高校で30.2%(普通科:39.1%)です。

この部分の客観性をどこまで公表するかで、

信頼度は変わると考えます。

次は目標設定です。

中学生で英検3級レベル、高校生で英検準2級レベルという目標は

果たして妥当なのでしょうか。

たしかに英検3級は中学3年分の範囲をカバーしています。

でも合格点は60~65%で、中学2年生レベルです。

英検準2級は高校1年~2年生の内容です。

英検2級は高校3年分の範囲から出題されます。

そう考えるとそもそも高校生の目標として

英検準2級は低すぎないでしょうか。

(また今回から英検2級レベルの生徒率が公表したのは改善です)

さらにいうと、英検準2級の合格点を考えると、

実質中学英語の内容で合格は可能です。

公教育の教育成果を測る上で、例えば

「英検3級/準2級で8割以上の正答」

のような内容のほうが合理的ではないでしょうか。

最後は中学教員の英語力です。

今年は英検準1級「相当」が41.6%でした。

目標に50%に対しては悪くないですね。

ちなみにかつてはTOEIC730点以上も明示されていましたので、

おそらく「相当」にTOEIC730点以上の人数も含まれています。

で、この英検準1級相当の英語力ですが、

決して高いものではないんですよね。

「英語を使える入り口」くらいのイメージです。

個人的には英語を教える立場の方は

全員」持っていてもいいのではないでしょうか。

つまり、目標の50%は低いのでは、ということ。

また(おそらく)4技能でないテストのスコアが計上されていること。

この2点は見直しの対象ではないかと思いますね。

(現状に合わせて現実的に目標設定していると推測しますが)

あと、中学生、高校生で英検2級を取得する生徒は一定数います。

(調査では普通科高校生で英検2級保有16%/英検2級相当を含めて27.6%)

英検準1級の英語力がない教員が、

英検2級を取得し、それ以上の英語力をつけようとするときに、

どうやって指導ができるのか、と考えてしまいます。

一定数いる「出来る生徒」を満足させられないのは、

「出来ない生徒」を置いていくのと同じくらい、不幸なことです。

英検準1級取得の目標値は95%くらいにしてはどうでしょうか。

適切な学習法で、適切な時間学習すればかならず達成できるので。

合格点が70%と考えれば、それでも人に教える英語力としては

最低限といえるレベルです。

まとめ

2022年度(2023年3月卒業対象)の英語教育の状況は、

全体的に改善がみられるという結果でした。

会話重視のシフトが功を奏して、

生徒の実際の英語力も向上しているようです。

また高校生の目標は普通科では

すでにかなりの達成率になっていました。

高校の英語教員は目標に対して達成間近です。

一方で、課題点もいくつかありました。

そもそも中学卒業段階で「英検3級合格相当」、

高校卒業段階で「英検準2級合格相当」、

は低いのではないかということ。

これは英検の合格点の問題かもしれませんが。

最後に中学英語教員の英語力の問題です。

英検2級を持つ中学生はこれからどんどん増えるはずです。

そんな状況で充実した教育を提供するには、

英語教師は「圧倒的に」生徒以上の英語力

持つ必要があります。

公立中学は生徒側が選べないので、

より教員の責任は重くなります。

(高校は自分で選んでいくことが可能)

・補足と留意点

※今回は日本全体の数字でお話しましたが、

 福井県、さいたま市のように全国平均を

 大幅に上回る地域もあります。

※高校からは学校間の学力差が大きいので、

 一律に平均で数字を見るのは合理的でないかもしれません。

※英語力を「学校教育だけ」から考えるのは

 実態に合わないでしょう。

 英語力の高い多くの生徒は学校外でも

 英語を学ぶ機会が多いと推測します。

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